世界各国の先住民族への公式謝罪

ここでは世界各国・各地域の政府の先住民族への公式謝罪について紹介したい。

多くの日本人は「国家の過去の行いを謝罪したのは日本だけ。他の国ではあり得ないことだ」と思い込んでおり、アジア諸国はもとより国内のアイヌ民族や琉球民族に対する謝罪すらも拒否する。だが実際には世界各国で様々な先住民族の権利回復運動が行われており、いくつかの国や地域では政府が先住民族への過去の行いを公式に謝罪している。

アイヌ問題が話題にのぼると「日本がアイヌにしたことよりも白人がアメリカ大陸やオーストラリア大陸の先住民族にしたことのほうがひどい」などと言い訳を並べ立てる日本人が多いが、例え過去の先住民族政策がどうであれ、少なくとも現在の先住民族政策において日本が他の国や地域に大きく後れを取っているのはまぎれもない事実である。

アイヌ民族初の国会議員として知られる故・萱野茂氏は生前、「私はこれまで19回諸外国を訪ね、それぞれの国の先住民族と交流を重ね、たくさんの話を聞きましたが、日本ほど先住民族の事を何ひとつ考えず無視している国は他にないという事に気づかされました」(『夜明けへの道』人間家族・特別号)と発言したが、これはまさにその通りで、日本政府も一刻も早くアイヌ民族への迫害の歴史を認めて公式に謝罪すべきである。



目次
1. オーストラリア政府が先住民アボリジニに歴史的謝罪
2. カナダ首相、同化のための「寄宿学校強制入学」を先住民に謝罪
3. 台湾の蔡英文総統、先住民に公式謝罪 元首として初
4. カナダのトルドー首相 先住民族傷つけたと謝罪
5. 米国連邦政府の出先機関による先住民族への謝罪



オーストラリア政府が先住民アボリジニに歴史的謝罪


オーストラリア政府、先住民アボリジニに対し正式謝罪へ魚拓

2008年01月29日 05:22 発信地:シドニー/オーストラリア

【1月29日 AFP】オーストラリアのジェニー・マクリン(Jenny Macklin)先住民問題相は28日、同国政府が2月12日から始まる議会で「可能な限り早急」に、同国先住民のアボリジニに対する正式な謝罪を行う意向であることを明らかにした。

前年12月に政権に就いた中道左派のケビン・ラッド(Kevin Rudd)首相は、先住民族との和解を促進し、過去の不正に対して謝罪を拒否してきたこれまでの保守政権の方針を覆すことを約束していた。

メルボルン(Melbourne)で記者団の取材に応じたマクリン先住民問題相は、謝罪は議会初日に行われるとの報道については認めることを避けながらも、アボリジニへの謝罪は早急に行われると語った。謝罪には、いわゆる「失われた世代」も含まれるという。

「失われた世代」とは、1970年代まで40年にわたって白人社会に同化することを目的に親元から引き離され、白人の養子にされたり養護施設に入所させられた、アボリジニと白人との間に生まれた子どもを中心にした数千人のアボリジニのこと。

さらに、マクリン先住民問題相は、議会で可能な限り早急に謝罪を行うとしながらも、「まずは専門家との協議の結論を出したい」と語った。また、謝罪対象についての詳細は明らかにしなかったが、より広い範囲で検討していると語り、謝罪が「未来への架け橋」になるものだとした。

アボリジニは、1788年に英国から最初の移民が到着して以来、低い社会的地位しか与えられず、現在はオーストラリアの総人口2100万人のうちわずか47万人しかいない。(c)AFP



豪ラッド首相、議会でアボリジニに歴史的謝罪魚拓

2008年02月13日 11:04 発信地:キャンベラ/オーストラリア

【2月13日 AFP】オーストラリアのケビン・ラッド(Kevin Rudd)首相は13日、白人の入植に伴い2世紀にわたり同国先住民のアボリジニに対して行われた不当な行為について、議会で謝罪した。

同首相は、「歴代の議会・政府の法や政策によって、われわれの仲間であるアボリジニに多大な悲しみ、苦しみ、損害を負わせたことを謝罪する」と述べた。

今回の謝罪は同国の歴史における重要な分岐点とみなされており、その様子は主要テレビ局によって生中継され、主要都市に設置された巨大スクリーンの周りには大勢の人たちが集まった。

議会付近には歴史的和解の様子を見ようと、全国から約1000人のアボリジニが集まった。(c)AFP



カナダ首相、同化のための「寄宿学校強制入学」を先住民に謝罪


記事の魚拓

2008年06月12日 13:20 発信地:オタワ/カナダ

【6月12日 AFP】(一部更新、写真追加)カナダのスティーブン・ハーパー(Stephen Harper)首相は11日、1874年に始まった同化政策の一環として、先住民15万人を寄宿学校に強制的に入学させて「深く傷つけてきた」として、先住民らに公式に謝罪した。

首相は下院で、議員のほか先住民の指導者、インディアン全寮制学校の卒業生らを前に、「カナダ政府は、先住民を深く傷つけてきたことを心から謝罪する」と述べた。

また、先住民の寄宿学校という考え方の根本には「先住民の文化や信仰は劣っていて適切ではない」という考えがあったと指摘した上で、「子どもたちを自分たちの家族や文化から切り離し、主要な文化に同化させるという方針は正しくなかったことをカナダ政府は認める。先住民の文化、遺産、言語を修復しがたく大きく損なったことを認める」と謝罪した。

子どもたちを同化させようとする試みは「カナダ史における悲しみの1章」だとも付け加えた。

■精神的、肉体的にも暴力を受ける

1874年以来、国内に住むインディアンやイヌイットら15万人が、政府の同化政策の一環として、教会が運営する132の寄宿学校に強制的に入学させられた。

先住民らは、校長や教師に暴力を振るわれたと証言。家族や共同体から切り離された上に、自分たちが先住民であることを「恥ずかしい」と思わせるような教育内容だったと証言している。

カナダの先住民組織「Assembly of First Nations」のPhil Fontaine氏は、「政府はインディアン性を子どものうちから摘み取り、カナダからインディアンというものを一掃しようとしてきた」と話す。ある卒業生は「文化のジェノサイドだった」と断言した。

強制入学制度は先住民コミュニティの貧困や荒廃を招いたとの批判もある。

カナダの総人口3300万人のうち、130万人が先住民だ。インディアン全寮制学校は、当時米国にあったインディアン実業学校をモデルに各地に創設されたが、1970年代にはその大半が閉校。サスカチワン州(Saskatchewan)に残っていた最後の1校も1996年に閉校した。(c)AFP



台湾の蔡英文総統、先住民に公式謝罪 元首として初


記事の魚拓

2016年08月01日 18:37 発信地:台北/台湾

【8月1日 AFP】台湾の蔡英文(Tsai Ing-wen)総統は1日、何世紀にもわたって虐げられてきた先住民に対し、元首として初めて公式に謝罪した。

先住民族の血を引く唯一の総統である蔡氏は、先住民社会との緊張緩和を目指す政府の取り組みの一環として、過去の不当な扱いについて調査する委員会を自ら率いる方針を明らかにしている。

蔡総統は演説の中で「先住民が過去400年間耐え忍んできた苦しみと不平等に対し、心の底から遺憾の意を表し、政府を代表して陳謝する」と述べた。

さらに今回の謝罪を「前へ踏み出す新たな一歩」と位置付け、「歴史を真摯(しんし)に見つめ直し、真実を語る必要がある」と指摘した。

先週末、台北(Taipei)の総統府前では先住民数百人が抗議行動を行い、狩猟権の保護や政府からの具体策の提示を要求していた。

台湾の人口2350万人のうち約2%を占める先住民は、数世紀前に中国本土から移民が到着するようになって以来、伝統文化が破壊されてきたと訴えている。(c)AFP



カナダのトルドー首相 先住民族傷つけたと謝罪


11月25日 18時17分

移民や難民との共生が国際的な課題となる中、カナダのトルドー首相は、言語教育の強要など過去の同化政策が東部に住んでいた先住民族を深く傷つけてきたことを正式に認め、謝罪しました。

カナダでは、19世紀から1990年代にかけて移民した白人層が先住民族の言語や文化は劣っているなどとして、先住民族の子どもたちを親から引き離し、英語やフランス語の教育などを強要してきました。

こうした同化政策について、2008年には当時の首相が謝罪しましたが、東部の一部の州の先住民については州が国に加盟する前に同化政策は行われていたなどとして謝罪を拒んできました。

トルドー首相は24日、集まった数百人の先住民族をまえに演説し、「きょうあなたたちの前で遅きに失した謝罪をさせていただきます。国民すべてが過去を認識し未来に向かって歩まなければならない」と述べました。

先住民族をめぐっては、2007年に先住民族の権利などを認める宣言が国連で採択されており、ことしに入ってからもオーストラリアで先住民の権利を強化するルールが整備されるなど各国で先住民と移民との共生を進める政策が広がっています。



米国連邦政府の出先機関による先住民族への謝罪


ネイティブアメリカンの子供に強制的に西洋文明を学習させた19世紀の「劇的ビフォーアフター」写真魚拓

2017年5月5日11:30 by 深海

「彼らも同じ人間だから」という善意がもたらしたもの、奪い去ったものに恐れおののきます。詳細は以下から。

古い西部劇では野蛮な敵として扱われていたネイティブアメリカン(当時はインディアンと呼ばれていました)の人々。侵略者による先住民族への差別は現在でも続いていますが、過去に行われた迫害は目に余るものでした。

そんな中、19世紀後半にリチャード・ヘンリー・プラットはネイティブアメリカンも白人も同じ人間なんだと主張、それを証明するためにアメリカ連邦政府内務省の出先機関インディアン管理局(BIA)の下で1879年にカーライル・インディアン工業学校を創設し、校長に就任します。

しかしこの「同じ」という考え方の下、プラット校長が行ったのはネイティブアメリカンも白人と同じような環境を与えれば白人と同じようになることを証明しようとすることでした。彼のスローガンは「インディアンを殺し、人間を救え(Kill the Indian, Save the Man)」という極めて歪んだものだったのです。

カーライル・インディアン工業学校、そしてこれをモデルに作られた数々の「インディアン寄宿学校」ではネイティブアメリカンの子供達を親元から引き離し、数百km離れた学校に幽閉。

それぞれの部族の言葉を喋ることを禁じ、強制的に髪を西洋風に切り、スーツとタイ、女性はコルセット付きのドレスの着用を義務づけました。子供達は何年も家に帰ることを許されず、キリスト教やパン職人、水夫、漁夫、農夫などの職業訓練を施されました。

(中略)

こうしたアメリカ合衆国のネイティブアメリカンへの苛烈な同化政策は20世紀になっても続きました。ようやくBIAが過去百数十年にわたる部族強制移住と同化政策の犯罪性を認めて謝罪したのは20世紀最後の年となる2000年のこと。

当時のBIA副長官ケビン・ガバーは涙ながらに以下のように歴史的謝罪を行いました。
私達は二度と貴方がたの宗教、言語、儀式、また部族のやり方を攻撃することはありません。私達は二度と、貴方がたの子供を里子に出させ、自分たちを恥ずべきものと教えるつもりはありません。
もちろんこれでネイティブアメリカンの問題が終結したわけではありません。経済格差や差別・偏見を始め根強くこの問題はくすぶり続けています。



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