日本の左派・リベラルがチベットについて学ぶべき理由


はじめに、日本の左派・リベラルの皆さんの多くが中国に友好的で、ある程度の理解を示してくださっていることには心から感謝いたします。

ですが、日本に直接関係する日本軍による中国侵略や南京大虐殺の歴史、現代日本の中国人差別・排斥などの問題では厳しく日本を批判してくださる日本の左派・リベラルの皆さんのうちのほとんどですら、残念ながら日本に直接関係しない問題となると反中勢力の主張をそのまま鵜呑みにしていることも少なくありません。チベット問題など中国の少数民族問題はその最たるものでしょう。

日本に直接関係しない問題なのだから日本の左派・リベラルがとやかく言うことではないと言ってしまえばそこまでかもしれません。ですが、実のところ今やチベット問題は日本の左派・リベラルにとっても無視できない問題となりつつあります。ここではその大きな理由を説明したいと思います。

■日本の右翼勢力の便利ツールと化したチベット

政治問題、特に中国に関係する問題について議論したことのある方なら、日本の右翼勢力からこういうことを言われた経験が一度はおありではないでしょうか?

右翼勢力「そんなことより中国のチベット弾圧を批判しろ!」
右翼勢力「そんなことをしたら日本がチベットのように中国に侵略される!」

そうです。日本の右翼勢力は政治問題における持論を正当化するためにチベット(および新疆ウイグル)のことを持ち出すのが大好きなのです。

日本の右翼勢力にとっては、単に大嫌いな中国を叩く口実にできるだけでなく、それ以外にも様々な政治問題における持論を正当化するための万能の便利ツールとして利用できるチベット(というかダライ・ラマ一味の反中プロパガンダ)はこの上なく都合のいい存在です。

具体的に事例を挙げれば、

日本軍によるアジア侵略・虐殺・強姦・略奪の歴史問題全般
→ 右翼勢力「そんなことより現在進行形で行われている中国によるチベット侵略・虐殺・強姦・略奪を批判しろ!」

日本の憲法改正・再軍備・核武装の是非をめぐる問題
→ 右翼勢力「憲法改正・再軍備・核武装をしなければ日本がチベットのように中国に侵略されて滅ぼされる!反対派は中国の工作員!」

日米同盟・在日米軍基地の是非をめぐる問題
→ 右翼勢力「日米同盟・在日米軍基地がなければ日本がチベットのように中国に侵略されて滅ぼされる!反対派は中国の工作員!」

琉球独立運動の是非をめぐる問題
→ 右翼勢力「沖縄が琉球として独立すればすぐにでもチベットのように中国に侵略されて滅ぼされる!独立派は中国の工作員!」

アイヌ民族への差別・民族浄化・文化破壊の問題
→ 右翼勢力「そんなことより現在進行形で行われている中国のチベット人への差別・民族浄化・文化破壊を批判しろ!」

移民・難民問題
→ 右翼勢力「移民・難民(特に中国系)を受け入れると日本がチベットのように人口侵略される!」

日本の差別問題全般(外国人、女性、障害者、LGBT、被差別部落、貧困者etc.)
→ 右翼勢力「そんなことより中国のチベット人差別・弾圧のほうがはるかにひどい!恵まれた国で生きてるくせに贅沢言うな!」

国連など国際社会による日本の差別・人権問題全般への批判
→ 右翼勢力「中国のチベット弾圧を批判しない偽善者どもにそんなことを言われる筋合いはない!」


…といった具合でしょうか。まさに万能の便利ツールですね。

実際に日本の右翼勢力がこのようにチベットを万能の便利ツールとして悪用して日本の問題を免罪している実態は、それらしいキーワードでGoogle検索をしてちょっと探してみればいくらでも目にすることができます。これら以外にもさらに探せば色々な派生形が見つかるかもしれませんね。

この手の主張に対して「他国も類似の問題を抱えていることは日本が抱える問題を免罪する理由にはならない」といった反論は現状でも左派・リベラルの側からよく聞かれますが、それでただの一度でも日本の右翼勢力が納得したためしがありましたかね?ありませんよね。

では、そもそも日本の右翼勢力のチベット論は正確な情報に基づくものなのでしょうか?いいえ、そんなことはありません。

彼らのチベット論のほとんどは、ダライ・ラマ一味の反中プロパガンダを何の検証もなくそのまま鵜呑みにして受け売りしているだけに過ぎない薄っぺらなものであり、例えば一次史料の提示をしつこく要求するなどしてやれば大抵はまともに何も出せなくなります。せいぜい「ダライ・ラマやチベット亡命政府が被害を訴えているから真実だ!」とか「愛国保守系メディアがそう報道したから真実だ!」とか言い張ってデタラメなコピペを繰り返すのが精一杯で、客観性のある一次史料たるものは何も出せません。

そりゃ、彼らのほとんどは中国語もチベット語も全く読めないのですから無理もありません。そのくせ、まるで自分の目で見てきたかのようにチベットについて自信満々に語るのですからどうしようもありません。

彼らにとってのチベットや新疆ウイグルが反中・嫌中のための便利ツールでありただの道具に過ぎないのは、極々一部の例外を除いてチベットや新疆ウイグルの文化や宗教についての理解や知識がほぼゼロな者ばかりの現状を見ても明々白々です。これは、日本の左派・リベラルが全員ではないにしても中国、朝鮮、沖縄、アイヌなどの文化に理解と造詣の深い方がかなりいるのとは好対照です。

よって、日本の左派・リベラルはこれ以上右翼勢力によるチベットの政治利用を許さないためにも、彼らのデタラメなチベット論に反論していく必要があります。

■ダライ・ラマ派は左派・リベラルの敵

しかし、いくらチベットが日本の右翼勢力によって政治利用されまくっているとはいえ、日本の右翼勢力憎しでダライ・ラマやいわゆる「チベット亡命政府」を悪く言うのは人権上問題がある、などと考える方もいることでしょう。ですが、決してそんなことはありません。

「チベット亡命政府」を自称するダライ・ラマ一味をはじめとするダライ・ラマ派は、日本の左派・リベラルの間で右翼勢力と並んで蛇蝎のごとく嫌われているCIA、統一教会、ナチスとのそれぞれの関係が深い人々で、左派・リベラルにとって最低最悪の存在です。証拠は当サイト内の以下のページにまとめてあります。

ダライ・ラマ派とCIAの関係
ダライ・ラマ派と統一教会の関係
ダライ・ラマ派とナチスの関係

そして2017年には、日本におけるナチス礼賛者の代表的人物として知られ、それが原因で米国の学会から追放された高須クリニック院長の高須克弥が「チベット亡命政府」を訪ねて自作の「高須平和賞」なるものを「亡命政府大統領」に授与し、大歓迎されたといいます。つまり「チベット亡命政府」はナチス礼賛者として有名な人物を公式に大歓迎するようなとんでもない組織なのです。

「チベット亡命政府」がナチス礼賛者を公式に大歓迎

ダライ・ラマ派は決して反中勢力の言うような「極悪非道の中華帝国に蹂躙される可哀想な被害者」などではありません。こういう日本の左派・リベラルの間でも蛇蝎のごとく嫌われているCIA、統一教会、ナチスといった犯罪集団との関係すら平気で築くようなイカれたカルト宗教集団だからこそ、中国政府との間にもめごとを作っているに過ぎません。なにせ中国政府が解放してやるまで、高等ラマ僧の糞尿をありがたい薬と称して大喜びで喰っていたような連中ですからね。

ダライ・ラマ派でないチベット族や他のほとんどの少数民族は普通に中国政府とも漢族とも共存できています。中国には多数派民族の漢族以外に55もの少数民族が暮らしており、そのうち民族独立論があるのはチベット族、ウイグル族、モンゴル族の3民族の一部だけです。

55の少数民族とは具体的には、

アチャン族、イー族、ウイグル族、ウズベク族、オウンク族、オロチョン族、回族、カザフ族、キルギス族、高山族、コーラオ族、サラ族、ジーヌオ族、シェ族、シボ族、シュイ族、ジン族、ダイ族、タジク族、タタール族、ダフール族、チベット族、チャン族、朝鮮族、チワン族、チンプオ族、ドアン族、トウ族、トゥチャ族、トーロン族、トンシャン族、トン族、ナーシー族、ヌー族、パオアン族、ハニ族、プイ族、プーラン族、プミ族、ぺー族、ホーチォ族、マオナン族、満洲族、ミャオ族、メンパ族、モーラオ族、モンゴル族、ヤオ族、ユイグー族、ラフ族、リースー族、リー族、ローバ族、ロシア族、ワー族
(日本語の五十音順)

…です。こうやって見れば、むしろ民族独立論がある少数民族のほうが圧倒的少数派だということがわかりますね。なお、台湾の独立論は主に台湾に住む漢族が中心となってやっているので、高山族の民族独立論ではありません。

中国少数民族一覧表」(魚拓)というサイトでは中国の各少数民族の1982年と2000年の人口がまとめられており、チベット族、ウイグル族、モンゴル族を含むほとんどの少数民族はいずれも普通に人口が増えています。人口が減ることなく普通に増えているのだから、反中勢力の言う「中国政府が少数民族を弾圧し民族浄化している」などという事実はどこにもないことがわかりますね。だからこそ、ほとんどの少数民族は中国政府を支持しているのです。

さて、貴方は日本の左派・リベラルの友好国である中国にチベット問題でも理解を示しますか?それとも、日本の右翼勢力、CIA、統一教会、ナチスという最低最悪の面々とズブズブな関係にあるカルト宗教集団を善玉だと思い込み続けますか?正しい答えはもうはっきりしていますよね?

■日本の左派・リベラルがすべきこととは?

日本の左派・リベラルがすべきこと、それはもちろん日本の右翼勢力やダライ・ラマ一味のデタラメなチベット論に反論し、チベットはお前らが都合よく政治利用できる便利ツールなんかではないんだぞ、という事実を思い知らせてやることです。ですが、そのための知識が何もない状態では反論をしようにも反論できません。

そこで、当サイトの各コンテンツはもちろんのこと、当サイトのトップページにある「チベット関連サイト集」というリンク集に集めてある様々な資料サイトにもあわせて目を通すことをおすすめしたいと思います。「チベット関連サイト集」にある資料サイトには中国政府が公式に提示している日本語訳済みの一次ソースや統計情報などのほか、当サイト管理人以上にチベットに関する正確な情報に詳しい有志の方々のサイトなども集めてあります。

しかしながら、日本において書籍でチベットに関する正確な情報を入手するのは困難です。反中国家である日本で出版されている中国の政治・歴史に関する本はただでさえ右翼勢力向けのデタラメな反中・嫌中ヘイト本が多く、ましてやチベット関連となるとほぼ反中・嫌中ヘイト本の独壇場です。

また日本のマスコミの情報にしても、右翼勢力からあれだけ「媚中」だの「売国」だの罵られている朝日新聞や毎日新聞ですらチベットや新疆ウイグルのことになると、「他国の人権問題も批判できる真のリベラル」とやらを気取っているのか、反中勢力の主張をそのまま垂れ流していることも少なくありません。

基本的に親中とされる日本の左派・リベラルの間でもチベット問題などでは中国への理解が進まないのは、こういう緩やかに情報統制された日本の社会状況が最大の原因なのでしょう。それでも書籍からチベットに関する正確な情報を得たいとお考えの方にはとりあえず、次の3冊を基本書としておすすめしておきます。

チャペル・ツェテン・プンツォ『簡明チベット通史』(グローバル科学文化出版)
(著名なチベット族の学者による、1951年までのチベット通史を正確に叙述した本の日本語版。値段が高いのと、1951年以降の現代史を取り扱っていないのが難点だが、下記の『多民族国家 中国』とあわせて読むことでチベット史を体系的に学ぶことができる)

王柯『多民族国家 中国』(岩波新書)
(チベットをはじめとする現代中国の少数民族問題についての正しい知識を得るための必読書。中国少数民族地区の発展ぶりを示す統計データなども多数収録。新書なので手頃な値段で入手できる)

寺島英明『中国少数民族「独立」論』(東京図書出版)
(タイトルを見ると少数民族独立論を肯定する本と思うかもしれないが、実際は中華民国時代の少数民族の歴史を検証し、チベット、新疆ウイグル、内モンゴルが独立できなかった内因に迫る。日本の外務省外交史料館が所蔵する戦前日本の公文書なども駆使しており客観性が高い)

日本の右翼勢力は「なぜ日本の左翼は中国のチベット・ウイグル弾圧を批判しないのか?」などと執拗に問うています。従来、その答えは「日本に直接関係しない問題なのだから、日本の左派・リベラルが日本国内の社会問題への対応をおろそかにしてまでとやかく言うことではない。では貴方はなぜイスラエルのパレスチナ弾圧やミャンマーのロヒンギャ弾圧などを批判しないのか?」といったように返すのが正解でした。

ですが、これからは違います。「そもそもチベット・ウイグル弾圧なんてものは存在しない。中国の法を犯したテロリストなどの犯罪者が取り締まられているだけだ。そうでないならなぜチベット・ウイグル以外の、50を超える他のほとんどの少数民族は弾圧されていないのか?ダライ・ラマ一味のプロパガンダを何の検証もなくそのまま鵜呑みにしている情弱乙」といったように返すのが正解になります。無論、その直後に右翼勢力側が発狂して、まさにそのダライ・ラマ一味のプロパガンダの受け売り情報をバンバン繰り出してくるでしょうから、当サイトのコンテンツや「チベット関連サイト集」にあるサイト群で学んだ知識を駆使して立ち向かい、きっちり論破してやりましょう。

あれだけ日本の右翼勢力が「日本の左翼はチベットについて知れ」とうるさいのだから、今こそチベットについて知り、はっきりと意見してやろうではありませんか。ただし、右翼勢力が信奉するデタラメな情報源でではなく、当サイトや関連サイト群が紹介している正確な情報源でです。

それが、今の日本の左派・リベラルに必要なことなのです。


関連項目


  • チベットの歴史沿革
  • チベット問題とは何か



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